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ジャイロボール

ジャイロボールとは?
ジャイロボールとは手塚一志氏によって発見されたボールで、ボールの進行方向と回転軸が一致したボールです。
通常、バックスピンストレートは図1のように、投手側から見てその名のとおりバックスピンしています。

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図1

一方、ジャイロボールはボールの進行方向(つまり捕手方向)と回転の軸がほぼ一致しているボールのことを言います。(図2)

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図2

どんなボールになる?
さて、ジャイロボールとはどの様な性質のボールなのでしょうか。ほとんどの人は「浮く」などの表現をするかと思いますが、
それは半分間違いであるといえます。そもそも、ジャイロボールというのは1種類だけではなく、いろんな種類があります。
ホップするように見えるジャイロや落ちるジャイロなど、種類や性質もさまざまです。
ですので、ジャイロボール=「浮くような感覚を受けるボール」ではないのです。
ボールの性質を左右する縫い目
ジャイロボールを理解するに当たって、非常に重要なのが縫い目です。ボールの大きさに対して約3%ほどしかない縫い目ですが、
ボールの性質を大きく左右します。縫い目の位置を変える事によって、空気抵抗値を変えることができ、
それによっていろいろな種類のジャイロボールを投げることができるのです。
対称ジャイロと非対称ジャイロ
ジャイロボールは複数ありますが、とても全部説明し切れません。そこで代表的なものとして、対称ジャイロ非対称ジャイロを説明します。
これら2つの球種は、構造(原理)がシンプルで、差がわかりやすいのです。
まず、対称ジャイロですが、ボールが純正ジャイロ(進行軸と回転軸が完全一致)回転したとき、捕手側から見て
図3のような縫い目位置で回転をしているボールです。縫い目の位置が対称の位置にあるので対称ジャイロと呼ばれます。

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図3 対称ジャイロ

一方、非対称ジャイロとは、純正ジャイロ回転と、回転はまったく同じながら、縫い目の位置が非対称の位置にあるのでこう呼ばれます。(図4)

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図4 非対称ジャイロ

対称ジャイロと非対称ジャイロの違い
たがが縫い目の位置が違うだけですが、これだけでもジャイロボールはかなりの差が出るのです。
実験では、時速150キロ、発射角は水平で対称ジャイロと非対称ジャイロを投げた場合、結果的には、
対称ジャイロは終速142キロ、落差は101センチ。一方、非対称ジャイロは終速131キロ、落差は110センチとなります。
(注意)この実験での非対称ジャイロは、2SGの縫い目の位置ではなく、空気抵抗値が最大の少し複雑な縫い目の位置です。
なんと、縫い目の位置が違うだけで速度は11キロ、落差は9センチの差ができます。時間差では0.02秒の違いです。
しかし、0.02秒というと、ごくわずかな違いだと思いがちですが、140キロのボールは0.02秒の間に約80センチ進みます
つまり、縫い目の位置を変えるだけで約80センチ分タイミングをずらすことができるのです。
これはジャイロボールならでわです。これがもし、4シームのストレートと2シームのストレートだったら、こんなに大きな差はできません。
ジャイロ回転はいかに空気抵抗を大きく左右する回転かがわかります。
ホップするジャイロは?
対称ジャイロはバックスピンストレートよりも速く到達します。しかし、1m以上沈んでいては、速く到達してもあまり意味がありません。
ホップする(するような)ジャイロボールこそ「魔球」と呼ぶにふさわしいボールではないでしょうか。
では、どうすればホップするジャイロボールが投げられるのでしょうか。その説明をする前に、ジャイロボールの性質を見てみましょう。
ジャイロボールの性質
よく考えてみれば、ほぼまっすぐに進むバックスピンストレートよりも、1m以上おちながら進むボールのほうが速いとは、
おかしな話です。それだけ、対称ジャイロはバックスピンストレートよりも空気抵抗が少ないのです。
そして、その小さな空気抵抗を生かすためには落ちる対称ジャイロではなく、ホップするような伸びるジャイロボールが有効なのです。
さて、空気抵抗が対称ジャイロに比べ大きいのにほぼまっすぐ、遅く到達するバックスピンストレートと、空気抵抗が小さいのに大きく沈みながらも
バックスピンストレートより速く到達する対称ジャイロ。この不思議なからくりの仕組みには、ある1つの力が関係しています。
それが、マグナス力というものです。(まぐなすりょくです。まぐなすかではありません)
マグナス力とは、簡単に言えばボールを動かす(変化させる)空気力です。このマグナス力が、ボールを右に曲げたり左に曲げたりしているのです。
バックスピンストレートには、バックスピンによって、上向きにマグナス力が発生します。(詳しくはリサーチ直球の仕組み参照)
これにより、本来は放物線上をたどる予定だったボールを、それよりも上のラインを通させることができるのです。
つまり、バックスピンストレートには上向きの力が発生し、ほぼまっすぐすすむバックスピンストレートになるのです。
ほぼまっすぐといいましたが、正確には西武松坂レベルでも数センチ沈んでいます。一般的なストレートは沈んでいるのです。
もし、バックスピンストレートをホップさせようとするならば、回転力か球速を挙げればよいのです。
マグナス力は回転力と球速に比例するからです。球速160キロならば約50回転/秒必要だといわれています。
ストレートのトップレベルにある、西武松坂投手でもよくて〜40回転/秒ほどなので、なかなか難しいことだといえます。
一方、対称ジャイロは、マグナス力を発生することができません。マグナス力というのは、ボールの回転軸と垂直の方向に発生します。
バックスピンなら上、トップスピンなら下、サイドスピンならそれぞれの左右方向に発生します。
ジャイロ回転はマグナス力の影響を受けることができないので空気抵抗が小さくとも沈んでしまうのです。
これが空気抵抗が小さくとも沈んでしまうジャイロ回転のボールのからくりです。
バックスピン+対称ジャイロ=ホップ
バックスピンではほぼまっすぐながら対称ジャイロより遅く到達し、対称ジャイロは大きく沈みながらバックスピンストレートより速く到達する。
なんとかこれらのボールのいいところだけを取って1つのボールにできないでしょうか。
できるんです。そして、そのいいとこどりのボールこそ、ホップするような感覚を受けるジャイロボールなのです。
ではその正体はどの様なものなのでしょうか。よく考えれば割と簡単です。
バックスピンストレートと、対称ジャイロを足して2で割ればそうなります。
数字的な計算は本来できないのですが、実際にボールを持って確かめてみてください。
バックスピンと、純正ジャイロの中間の回転です。答えは、図5のような回転になります。

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図5 これがホップするジャイロボールの回転と縫い目の位置

ただし、回転の軸の角度や、正確な縫い目の位置は画像のとおりではありません。
それは、個人差や微妙な感覚の違いによってそれらが違ってくるからです。ですので、図5はあくまで目安、参考的なものです。
これが欲にいうホップするようなジャイロボールです。
ホップしてない!?
「ホップするような」と、遠回りな表現をしているのには理由があります。結論から言えば、図5のボールはホップしないのです。
このボールは、バックスピンの上向きのマグナス力と、対称ジャイロの空気抵抗の小ささを足したボールなのです。
空気抵抗がバックスピンストレートより小さくなり、上向きのマグナス力が発生しているというのに、まだホップさせることはできないのです。
結果的に、このボールは「バックスピンストレートより早く到達するあまり沈まないボール」にすぎないのです。ホップしないのです。
ですので、「ホップするような」という表現は適しているとはいえないのです。
しかも、このボールは、バックスピンストレートより沈んでいるのです。上向きのマグナス力を発生させるバックスピンが斜めの軸なので、
バックスピンより上向きのマグナス力が少ないので仕方ないながら、当然の結果です。
なので、このボールを表現するならば、「思ったより速く到達するボール」が好ましいでしょう。
でもホップしてる!?
しかし、このボール(めんどくさいので以降フォーシームジャイロ、4SGと略しましょう)と対戦した打者は、みんなが口をそろえて
「ホップしてきた」というイメージを受けるのです。打者だけでなく、受ける側(捕手)もそのイメージを受けています。
対戦した打者の中には、はるかにストライクゾーンを外れ、自らの頭の高さ並の4SGを空振りしている者もいるのです。
理論的にはストレートより沈んでいるのに、感覚的にはストレートよりホップしている。また4SGの謎が増えました。
ホップして見える理由
しかし、ホップしているように見えるのには理由があります。それは、ボールの発射角の問題です。ジャイロボールを投げるには、
ジャイロリリースという、少し特殊なリリースを行わなければいけません。それはまた別の章で説明できるかと思います。
このジャイロリリースでボールを投げた場合、通常のバックスピンストレートを投げるような縦振りスナップリリースよりも
発射角が上を向くのです。つまり、ジャイロリリースは投げ上げ、縦振りスナップリリースは投げ下ろすのです。
勘違いしないでほしいのは、どちらのリリースも、リリースポイントの高さは同じです。発射の角度だけが違うのです。
ではなぜ、発射角が上だと、ホップしているように感じるのでしょうか。それは人間の感覚の問題です。
図6をみてください。ボールがリリースされた後の4SGの発射角や初期変化量を見て、打者は青の軌道にボールが来ると予測します。
これは、通常のボール(バックスピンストレート)に慣れているので、感覚的に仕方なく実際の軌道と違うルートを予測してしまうのです。
しかし、4SGとバックスピンストレートは当然軌道が違います。4SGはそれよりもボール1個分上の緑の軌道にボールを乗せることができるのです。
簡単に言えば、打者から見れば「ボール1個分ホップしている」のです。あくまで感覚の問題なので、もっとホップしているように感じる打者もいます。
ボール1個分というとたいした物ではないように思えますが、このボール1個分のホップを悟れる目のある打者ほど
ホップしたというイメージを受けるのです。さらに4SGは予想より速く到達するので、ボール1個分の修正もうまく行えず、
結果的に「ホップしてくる伸びのある球」と捕らえてしまうのです。

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図6 発射角と軌道

もう1つの魔球、非対称ジャイロ
非対称ジャイロについては、既にある程度述べてありますが、さらに詳しく解説します。
ジャイロボールというとどうしても4SGに注目しがちですが、厄介なのはどちらかというとこの非対称ジャイロのほうかもしれません。
非対称ジャイロ(以降ツーシームジャイロ、2SG)の特徴は、4SGとまったく逆で、とにかくボールがこないのです。(打者視点)
2SGは4SGに比べ空気抵抗が大きくなります。しかも、4SGとは違い、純正ジャイロ回転なので上向きのマグナス力は発生せず、
重力によって(4SGよりも)沈みます。また、4SGと2SGでは、握りの違いからか、2SGのほうが初速が遅くなってしまうのです。
初速も遅く、終速はさらに遅く、空気抵抗と重力によって沈むボール、それが非対称ジャイロ、ツーシームジャイロです。
このボールと対戦した打者は、「遅いボールが来るとわかっていてもタイミングをはずしてしまう」といっています。
わかっていてもタイミングの合わない2SGも、まさに魔球といえるボールでしょう。

以上、これらが代表的なジャイロボールです。次章からは投げ方を中心に紹介します。

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